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ヒミツのカルテ
第1章 咲希(32)不感症?
一週間後、咲希は再びあのクリニックの自動ドアをくぐった。
前回と同じように、鍵の開いている個室へと進む。
部屋に入ると、前回と同様に温かいハーブティーが用意されていた。
やがて控えめなノックの音が響き、ドアが開いた。
「こんにちは、山下さん。よくいらしてくださいましたね」
優しく微笑みながら入ってきたのは、女性医師の川島だった。
川島は手元のカルテを開き、落ち着いた声で先週行った検査の結果を告げた。
「まずは、おりものの検査結果ですが……こちらは全く問題ありませんでしたよ。炎症や感染症なども一切見当たりませんでした。安心してくださいね」
「……よかったです」
咲希は胸をなで下ろし、小さく息をついた。
「そして、前回の診察でお身体の状態を一通り確認させていただきましたが、子宮や膣内の粘膜などに、病気や物理的な異常は全くありませんでした」
川島はそこで一度言葉を区切り、まっすぐな瞳で咲希を見つめた。
「病的な原因がないということは、山下さんが感じていらっしゃる痛みや、触れられることへの恐怖は——お身体の故障ではなく、お心や神経の緊張、つまり精神面からきているものだと言えます」
「精神面から……」
「ええ。頭では『普通にしなきゃ』『直さなきゃ』と焦っていても、過去の経験や、あるいは無意識の不安や緊張が、体に対して『怖い、守らなきゃ』と強くブレーキをかけてしまうんです。体がこわばったままでは、どうしても痛みを感じやすくなってしまいますからね」
その言葉に、咲希は深くうなずいた。
私がおかしいわけでも、冷たいわけでもない。
心がずっと緊張で怯えていたんだと、改めて腑に落ちる思いがした。
「自分の心がどう反応しているのか、もう少し詳しく知るために、『不感症』や感覚の特性に関する検査を進めていきましょうか」
川島が優しく提案する。
「不感症の、検査……ですか?」
「はい。責めたり無理をさせたりするものではありませんから、安心して進めていきましょうね。山下さんがご自身の体を安心して感じられるように、一つずつ紐解いていきますから」
その温かい言葉に背中を押され、咲希は「はい、お願いします」と、今度は自分の意思でしっかりと頷いた。

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