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ヒミツのカルテ
第1章 咲希(32)不感症?
「お疲れ様でした。超音波の検査、とても上手に力を抜けましたね。子宮の状態はとても綺麗で、腫れも炎症もありませんよ。安心して大丈夫ですからね」
川島医師のほっとするような声色に、咲希はわずかに開いていた目をつむり、長いため息をついた。
心なしか、下腹部の強ばっていた力も少しだけ緩む。
しかし、次の瞬間だった。
カチャリと、医療器具特有の冷たい金属音が耳に飛び込んできた。
次は何をされるのか…不安で再び心臓が跳ね上がり、呼吸が浅くなる。冷や汗がこめかみを伝い、咲希の身体がガチガチに硬直した。
その変化を、長年の経験から桐島は見逃さなかった。
クスコの形や冷たさを視覚で捉えたら、咲希の恐怖心は一気に爆発してしまうだろう。
そう配慮した川島はすぐさま優しく、しかし確固たる声で語りかけた。
「山下さん、もう目をつむっていて大丈夫ですよ。私のお話だけに意識を向けましょうね」
「あ、の……次は何を……」
震える咲希の声を受け止めながら、川島はそっと温かい手を咲希の肩に添えた。
「大丈夫よ、見なくていいですからね。私がちゃんと声をかけながら進めますから。さあ、ゆっくり息を吸って……細く長く、吐きましょう。ふーっ……」
桐島が呼吸のペースを作ってくれる。
咲希はすがるような思いでその声に意識を集中させ、言われるがままに目を固く閉じたまま息を吐き出した。
カチャ、と金属が触れ合う音がかすかに聞こえる。恐怖で涙が滲む中、桐島は優しく囁いた。
「力を抜いて、私の声だけ聞いていてね。……では、失礼して、膣内の炎症を確認するための器具を入れますね。ゆっくり、入っていきますよ……」
「あぁ……っ……!」
冷たく硬質な器具が、恐怖でこわばりきった膣内をこじ開けるようにして割って入ってきた瞬間、咲希の喉から情けないような、痛みをこらえるような声が漏れた。
下半身を引き裂かれるような、あるいは押し広げられるような異物感。
「痛い、怖い、無理……っ!」と頭の中でパトランプが激しく点滅し、反射的に腰を浮かせようとしてしまう。
「息を吐いて、山下さん……! そう、力を入れないで、息をふぅーっと細く長く吐き出すのよ……」
必死にその声にしがみつきながら、咲希はベッドに身体を押し付け、歯を食いしばりながら必死に息を吐き出した。

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