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ヒミツのカルテ
第1章 咲希(32)不感症?
必死に息を吐き続けたおかげか、激しい痛みはないまま、クスコは滑るように奥へと収まっていった。
「上手ですね、その調子でゆっくり息を吐いていてくださいね。膣内の炎症を確認するため、ここも綿棒で拭いますね」
そう告げられた直後、細長い綿棒が器具の隙間からスッと差し入れられた。
奥の壁をキュキュッと擦られるような、重たい鈍痛が下腹部の奥底に響く。
「んっ……っ!」
思わず身体がビクリと跳ね上がりそうになるのを、咲希は必死にこらえた。
「お口で息を吐いてねー、力を抜いて……」
耳元で優しく声をかけられながら、咲希は歯を食いしばり、ふうーっ、ふうーっ、と懸命に息を吐き出した。
その痛みに耐えながら、「もうすぐ終わる、大丈夫」と心の中で何度も自分に言い聞かせる。
「はい、これで終わりますよー。お疲れ様でした」
その言葉とともに、カチャリと金属が外れる軽い音が響いた。
ウィーンと再び静かな駆動音がして、変形していたベッドが滑らかに元のフラットな形状へと戻っていく。
「よく頑張りましたね。では、ゆっくり体を起こして、お着替えをしてから最初のソファのお部屋に戻ってくださいね。お待ちしています」
先ほどまでの恐怖や恥ずかしさで体力を消耗したものの、不思議と心には妙な軽さがあった。
言われるがままに再びソファ席に腰を下ろすと、ほどなくして温かいハーブティーを持った川島が戻ってきた。
「お疲れ様でした。」
マグカップをそっと差し出され、咲希は両手で包み込むようにそれを受け取った。カップの温もりが冷えた手に染み渡る。
「今日は、おりものの検査、そして超音波と粘膜のチェックを行いました。……先ほどお話しした通り、子宮や膣自体はとても綺麗で異常はありませんよ」
その言葉を聞いて、咲希は心の底からホッと息を漏らした。
胸のつかえが少し取れたような気がする。
「ただ、おっしゃっていた痛みや、触れられることへの恐怖については、これから一緒に原因を探り、ゆっくりほぐしていく方法を考えていきましょうね」
川島は手元のカルテに優しく視線を落とすと、穏やかに告げた。
「おりものの検査結果や詳しいお話もありますので、また1週間後に来ていただけますか?」
「……はい、わかりました」
咲希はうなずきながら、自分の体に向き合うための初めての予約日を心に刻んだ。

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