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姉枕
第1章 東京……十八歳
姉さんだって、と僕は言い返したが、それよりも気になって仕方ないものがあった。もう明るいところまで戻ってきたというのに、姉さんは僕の腕にしがみついたまま、離れようとしないのだ。
「そろそろ、帰る?」
僕はそのことには触れず、自分より小柄な姉さんを見下ろしながら言った。
「うん。せっかくやから、海も見ていこうよ」
わざとなのか、たまたまなのか、姉さんがギュウと自分の胸を押しつけるようにしてきた。
遊びに遊び尽くして東京ジョイポリスを出た頃には、午後五時になろうとしていた。
ちょうど夕焼けの綺麗な時間帯で、東京湾も茜色に染まっていた。
ビーチにはたくさんのカップルがいて、僕たちと同じように体を密着させていた。東京に来て、良かったと思った。ここには僕たちを知る人は誰もいない。あの知り合いばかりの集落では、姉弟がこんなふうに体を寄せ合って夕景を眺めるなんてことは、絶対に出来ない。たちまち変な噂が広まって、それこそ村八分にされるだろう。ただでさえ、僕たちは……。
「そうや、東京タワーにも登らないとね。ご飯もあの辺で食べようよ。お洒落な店が多いから、お姉ちゃんが連れていってあげる」
「ほんま?」
姉さんはタクシーの中で約束したことを覚えていた。
「うん。帰りは電車でもええか? ゆりかもめも乗ってみたいやろ」
「うん!」
体はくっつけあっているけど、姉さんはやっぱり姉さんで、ふたたび僕を連れ回すように、東京案内をしてくれた。
まずは「浜松町」駅で降りて、近くのイタリアンレストランで夕食を食べた。恥ずかしながら、僕はレストランで食事をした経験もなくて、ピザやパスタを食べたのもこれが初めてだった。スプーンやフォークの使い方もよくわかっていなかったけど、姉さんが丁寧に教えてくれた。しかも姉さんは、ワインを注文して、僕にも飲んでみて、と自分のグラスを差し出してきた。一口飲んでみたら、ちょっと苦いけどジュースみたいだったので、「うまいわ」と言ったら、姉さんは生意気だと笑った。
店を出たときには日もすっかり暮れていて、東京タワーもライトアップされていた。東京タワーを目指して歩くこと、二十分ぐらいだった。
展望台に上って、レインボーブリッジのライトアップを見ることもできた。確かに綺麗であったが、正直、僕は夜景にうっとりするほどロマンチックな男でもなかった。
「そろそろ、帰る?」
僕はそのことには触れず、自分より小柄な姉さんを見下ろしながら言った。
「うん。せっかくやから、海も見ていこうよ」
わざとなのか、たまたまなのか、姉さんがギュウと自分の胸を押しつけるようにしてきた。
遊びに遊び尽くして東京ジョイポリスを出た頃には、午後五時になろうとしていた。
ちょうど夕焼けの綺麗な時間帯で、東京湾も茜色に染まっていた。
ビーチにはたくさんのカップルがいて、僕たちと同じように体を密着させていた。東京に来て、良かったと思った。ここには僕たちを知る人は誰もいない。あの知り合いばかりの集落では、姉弟がこんなふうに体を寄せ合って夕景を眺めるなんてことは、絶対に出来ない。たちまち変な噂が広まって、それこそ村八分にされるだろう。ただでさえ、僕たちは……。
「そうや、東京タワーにも登らないとね。ご飯もあの辺で食べようよ。お洒落な店が多いから、お姉ちゃんが連れていってあげる」
「ほんま?」
姉さんはタクシーの中で約束したことを覚えていた。
「うん。帰りは電車でもええか? ゆりかもめも乗ってみたいやろ」
「うん!」
体はくっつけあっているけど、姉さんはやっぱり姉さんで、ふたたび僕を連れ回すように、東京案内をしてくれた。
まずは「浜松町」駅で降りて、近くのイタリアンレストランで夕食を食べた。恥ずかしながら、僕はレストランで食事をした経験もなくて、ピザやパスタを食べたのもこれが初めてだった。スプーンやフォークの使い方もよくわかっていなかったけど、姉さんが丁寧に教えてくれた。しかも姉さんは、ワインを注文して、僕にも飲んでみて、と自分のグラスを差し出してきた。一口飲んでみたら、ちょっと苦いけどジュースみたいだったので、「うまいわ」と言ったら、姉さんは生意気だと笑った。
店を出たときには日もすっかり暮れていて、東京タワーもライトアップされていた。東京タワーを目指して歩くこと、二十分ぐらいだった。
展望台に上って、レインボーブリッジのライトアップを見ることもできた。確かに綺麗であったが、正直、僕は夜景にうっとりするほどロマンチックな男でもなかった。

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