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「私が欲しいですか?お嬢様」
第29章 専属〜叶わぬ逢瀬〜

北海道、洞爺湖町。
少し肌寒いけど、こんなに
気持ちのいい所にきたの初めて。
名雲家ってほんとすごいな、
こんないい所に別荘なんて。
「洞爺湖ってキレイなんですね」
彩芽の言った言葉に
晴人は優しく頷いた。
「しばらくは、
ゆっくりいたしましょう。
お食事の準備をしてまいります」
晴人は中へ戻り
彩芽は外で1人になった。
手に握る携帯は鳴ることはない。
颯太さん…
颯太さんと出会ってから
まだそんなに経っていないのに
颯太さんと出会う前の生活に
戻れない。
「このまま帰ってこないのかな…」
想えば想うほどに
切なさが増していく。
会いたい気持ちが増えていく。
彩芽は目頭が熱くなるのを
必死に耐えた。
彩芽の後ろ姿をじっと見つめる。
しばらく見ない間に
小さくなった身体。
尚弥は彩芽の様子を見にきたのに
声かけるのを躊躇していた。

