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「私が欲しいですか?お嬢様」
第29章 専属〜叶わぬ逢瀬〜



「彩芽様…」



突然呼ばれ驚き、振り向くと
そこには尚弥が立っていた。


少し期待してしまった。

颯太さんかもしれないと。


「尚弥さん…」


尚弥は無言のまま
彩芽に近づき髪の毛に触れた。


「どうしてここが…?」


「名雲家に伺いました。
心配いたしました」



「…すみません」



「いえ、謝る事では
ございません。颯太の事も伺いました」


彩芽は俯く。
尚弥の手は彩芽の
髪の毛を優しく撫でた。


「お辛いですよね…」


優しい言葉に熱いものが溢れ出る。

「大丈夫です…。きっと…」



彩芽は溢れる涙を止められず
両手で顔を抑えた。

ぐすっ…




そんな彩芽をそっと抱きしめる尚弥。


「大丈夫です…」



尚弥は小さな身体を
大切に大切に抱きしめた。



彩芽はその胸の中で
今までの我慢を全て吐き出す様に
泣き出した。




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