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第5章 『俺』の気持ち
車に乗る時までペコペコ頭を下げた畑山が、ようやく見えなくなる。

クルッと翔に背を向ける渚。

ゴクリ…

翔は唾を飲み込む。


「あの…槙野さん」

絞り出す声が震えて掠れる。


「……はい?」

立ち止まったものの、振り返る様子のない渚に、翔はまたゴクリと唾を飲んだ。


「あ……えっと、ちょっと……いいかな?」

「仕事の話ですか?」

「いや……」


渚からの告白を心ない言葉で返してしまった事……

謝りたくているのに、いざとなると躊躇ってしまう。


「すみません。今立て込んでいるので、仕事以外のお誘いは受けられません」

「あ……」

思わず黙り込んだ翔。

振り向く事なく、渚は歩き出してしまう。


人懐っこい笑顔をもう一度見たい。

心を揺さぶる優しい言葉をもう一度聞きたい。


なのに、翔はその場に立ち尽くし、追い掛ける事が出来なかった。


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