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第7章 『俺』の彼女
「うちの会社のエントランスで抱き合うの止めて下さ〜い」

突然掛けられた声に、我に返った愛里咲がその身体を慌てて離した。


「……兄貴じゃ頼りないから、渚が上手くフォローしておいて」

声を掛けてきた渚の方へと視線を移しながら、ずっと硬かった琉の表情が柔らかくなる。
 

「愛里咲ちゃん、ごめん。大丈夫?」

「……私の方こそ、お仕事の邪魔をしてすみません……」

心配する翔にそう答える愛里咲は、相変わらず顔色が悪い。

無理矢理作った引き攣った笑顔に、翔の胸はズキンと痛んだ。


「ねぇ、双子ちゃんは?」

渚が周りをキョロキョロ見ながら聞く。


「あ……」

小さく呟いた後、伺うような視線を愛里咲へと向ける琉。


「まさか車内に放置⁉︎ 」

そう行って駐車場へと走り出す渚。


「エアコンは掛けてある!」

慌てて弁解しながら、琉もその後ろを追う。


「大事なわが子、放置して来るなよ…」

呆れたように呟いて、愛里咲へと笑って見せた翔だが、

(愛里咲ちゃんが気になって飛び出して来たんだろうな)

先程までの琉らしからぬ様子を思い出し、弟の大切な想い人の背中を優しく押して2人の後を追った。


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