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第8章 弟の過去
「正解です。デザートも付けますね」

満足げに笑った渚の指がそっと離れていく。

その指がいくつかのフルーツの上で品定めするように小さく円を描いた。


「リンゴとバナナは定番過ぎるかな?

あ、葡萄…マンゴーもある!

翔さんはどれが一番好きですか?」


振り返った渚の、艶やかな唇を見つめてしまう。

リンゴ…をかじる姿も可愛らしいだろう。

バナナ……を、口に……口に含むその姿は………っ


「ば、ばば、バナナはダメ!」

「え?バナナ嫌いですか?」


そう言って、バナナを棚へと戻す渚。

翔はその視界から、リンゴのように赤くなった顔を隠した。


(ヤバイ、妄想が暴走してきてる……)


「いや…バナナ、好きだよ?」

慌てて弁解する翔の背に、赤ん坊を抱いた若い母親の肩がぶつかった。

互いに、すみませんと頭を下げる。

父親らしき若い男性と、その親であろう初老の男女が4人。

初孫のお祝いでもするのか、皆笑顔で赤ん坊と母親に駆け寄った。


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