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第8章 弟の過去
そんな彼らを見ながら、

「愛里咲のご両親、高校に入ったばかりの頃に亡くなってるんですけど…」

渚が悲しげな表情で言った言葉に、

産院で見た、初孫を抱いてはしゃぐ両親を見て涙ぐむ愛里咲を思い出す。


(10年以上も1人で頑張ってきたんだな…)

親に頼りきりの翔には想像し得ない苦労があったのだろう。



「そのせいか、愛里咲っていろんな事を1人で抱え込む癖があって…」

「あー…なんか、同じ様な事、琉も言ってたな」

愛里咲の事を話す時の琉の優しい表情を思い出す。


「え? そっか…じゃあ、琉くんがちゃんとフォローしてくれてるのかな?」

だが、

渚のその言葉に、愛里咲をからかう琉の生き生きとした表情が翔の頭を過る。


「フォロー!琉がフォローとか…あり得ないかも」

「ふふっ、昔の琉くんだったら確かにあり得ないですね」

渚までも何か思い出すような仕草をし、その後でクスクスと笑った。


「……昔?」

「高校1年のときだったかなぁ……琉くんが付き合ってた彼女がいて」

「愛里咲ちゃんと付き合う前?あの頃って来るもの拒まずだったんじゃない?」


高校時代に愛里咲と付き合った期間、激しかった琉の女関係が落ち着いた事は噂で聞いていた。

だが、その前は取っ替え引っ替え家に連れ込み、かなり乱れたその様を翔はその目で見ていた。

あの頃、”琉の彼女” はたくさん居たに違いない。

翔は嫌悪の表情を浮かべた。


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