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コンプレックス
第8章 弟の過去
学生時代特有のあの空気の中に身を置いていれば、イジメられる子を助けるのは相当の覚悟がいる。

友達に手を差し伸べられなかった自身への後悔。


「だから!今度、愛里咲に何かあったら助けてあげたいなって!」


クルリ…

笑顔で振り返った渚を、

ギュッ!

翔は、ここがスーパーだという事も忘れて抱き締めていた。



「俺も!俺も渚と同じこと、琉に対して思ってた」

「翔さん?」


弟と比べられ、弟よりも出来が悪いと言われるコンプレックス。

弟と…そして弟の代わりとはいえ付き合ってくれた元カノたちと、向き合うことを避けてきた翔の過去が、渚の言葉とどこか重なった。


「しょ、翔さん!ここ、スーパーですよ!」

「分かってるけど、可愛くて仕方ない!」


更に強い力で抱き締める翔。

そのオデコに、渚の柔らかな唇が優しく触れた。


「〜〜〜〜〜っ」

思わず緩めた腕の中から、渚の身体がスルリと抜け出す。


「恥ずかしい〜!早くお会計済ませてここ出ましょ?」

頬を赤らめ、翔の腕を引いて歩き出す渚。

身体に滾る熱を預けるかのように、翔は渚の指に自身の指を絡めた。


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