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コンプレックス
第8章 弟の過去

鍵を出すのももどかしい。
鍵を開けるのももどかしい。
いつも意識もしない ”家に帰る” という動作の一つ一つが、遠くて…遅くて…もどかしい。
ようやく辿り着いた玄関の鍵穴へ鍵を差し込めば、
「─────開いてる……」
鍵を回すことなく開いたドアに、嫌な予感が過る。
そして、
その予感が当たっていることを裏付けるかのような、
「ん?赤ちゃんの声……双子ちゃん来てるのかな?」
嬉しそうな渚の声とは裏腹に、
家の中からは、久々に聞く陽向の泣き声に翔は溜息を零す。
そしてリビングには、陽向を抱いた汗だくの母親。
「……何で居るんだよ……」
ガッカリな気持ちを込めて低く呟いた翔の声に、
「翔⁉︎ おかえりー‼︎ 」
振り返った母親の嬉しそうな声。
(家じゃなくてホテルに行けば良かった‼︎ )
慌てて踵を返した翔。
だが、
「あら?渚ちゃん?」
横からひょっこり顔を出した渚の姿が母親に見つかってしまった。
「こんばんは!あの、夕飯作りにお邪魔したんですけど、夕飯まだですか?」
「陽向が全然泣き止まなくて、まだ何もしてないのよ。助かるわぁ」
スーパーのレジ袋をチラつかせた渚に、母親は嬉しそうな顔を向ける。
「夕飯作りに…なんて、もしかして渚ちゃん」
「はい!翔さんとお付き合いさせて戴く事になりました!」
「えー!ホントに⁈ ありがとう‼︎ 」
鍵を開けるのももどかしい。
いつも意識もしない ”家に帰る” という動作の一つ一つが、遠くて…遅くて…もどかしい。
ようやく辿り着いた玄関の鍵穴へ鍵を差し込めば、
「─────開いてる……」
鍵を回すことなく開いたドアに、嫌な予感が過る。
そして、
その予感が当たっていることを裏付けるかのような、
「ん?赤ちゃんの声……双子ちゃん来てるのかな?」
嬉しそうな渚の声とは裏腹に、
家の中からは、久々に聞く陽向の泣き声に翔は溜息を零す。
そしてリビングには、陽向を抱いた汗だくの母親。
「……何で居るんだよ……」
ガッカリな気持ちを込めて低く呟いた翔の声に、
「翔⁉︎ おかえりー‼︎ 」
振り返った母親の嬉しそうな声。
(家じゃなくてホテルに行けば良かった‼︎ )
慌てて踵を返した翔。
だが、
「あら?渚ちゃん?」
横からひょっこり顔を出した渚の姿が母親に見つかってしまった。
「こんばんは!あの、夕飯作りにお邪魔したんですけど、夕飯まだですか?」
「陽向が全然泣き止まなくて、まだ何もしてないのよ。助かるわぁ」
スーパーのレジ袋をチラつかせた渚に、母親は嬉しそうな顔を向ける。
「夕飯作りに…なんて、もしかして渚ちゃん」
「はい!翔さんとお付き合いさせて戴く事になりました!」
「えー!ホントに⁈ ありがとう‼︎ 」

