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第8章 弟の過去
そんな翔の様子をバッチリと見ていた母親と渚は顔を見合わせる。


「翔こそ、何だかんだ琉の事、気にしてくれてるのね」

母親が嬉しそうに笑えば、

「本当に!双子ちゃんが生まれた頃の翔さんとは大違い!」

渚も翔に優しい笑みを見せる。


「ふふっ、渚ちゃんも高校生の頃と大違い」

「え?」

不意に自分へと話を振られ、渚はキョトンと首を傾げた。


「明るくて社交的な所は変わらないけど、恋愛は受け身で見つめるだけで幸せって感じだったのにね」

「えっ⁉︎ き、気付いてたんですか⁈ 」

琉への片想い。

それを琉の母親が知っていたなんて恥ずかし過ぎる。

慌てる渚に、

「あはは!図星?そりゃそうよね、渚ちゃんのお母さんにそう聞いたから」

母親は可笑しそうにそう言った。


「……なんだぁ……もう、お母さんのお喋り!」

そう言ってまたクスクス笑い合う渚と母親。


その腕の中で、その存在を示すかのように泣いていた陽向が一層大きな声でひなり泣いた。


「おい!くつろいでないで陽向泣き止ませろよ!」

「お茶出すわ。翔、陽向お願い」

「やだ!泣き止ませる自信ない!」


一日の大半は泣いているのではないか。

そう思うほどよく泣く陽向。

声をかけておきながらも、翔は慌てて自身の腕を背中へと回して隠した。


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