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コンプレックス
第8章 弟の過去
コトッ

テーブルに並べられる三つの湯呑み。


「赤ん坊にヤキモチ妬かない」

母親のニヤニヤ顔が無性に腹立たしい。


「ほら渚ちゃん。陽向は私に任せて、お茶どうぞ」

「ありがとうございます」

陽向を母親に預け、渚が翔の隣に立つ。


「あー…俺はトイレ……渚、先に座ってて」

「え?うん」
 
渚の座る椅子を引いて座らせ、翔は逃げるようにリビングから出て行く。


(陽向め、俺ですらまだ触れてないあの膨らみに…!って…赤ん坊相手に何言ってんだ、俺は)

陽向の泣き声など気にも止めず話し込む母親に、笑顔で答える渚。

リビングのドアを閉めながら、翔はチラリと二人を見る。


(陽花じゃなくて陽向だったから余計ムカつくのか?いやいや、琉の息子に妬くなよ)

熱を滾らせる自身のムスコに言い聞かせながら、翔はトイレへと駆け込んだ。


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