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第8章 弟の過去
「もー、照れないの〜」

その背を追いかけ、抱き着くように琉の腕へと腕を絡める愛里咲。


「………」

立ち止まり、琉は愛里咲をジッ…と真顔で見つめる。


「はい、調子に乗りました!ごめんなさい!」

パッと目と手を離し、数歩下がって歩き出す愛里咲。


月明かりしかない薄暗い砂浜は、低めのヒールなのに歩きにくい。

「わっ…」

転びそうになる愛里咲の目の前に、

「ん」

琉の大きな手が差し出された。


ギュッ…

その手を取り嬉しそうに笑う愛里咲に、琉の口元も思わず綻ぶ。


砂浜に無造作に置かれたテトラポッドの手前で、愛里咲の足が止まった。


「流れ易かったな……若かった私……」

あの時、

このテトラポットの陰で琉にされた事を思い出し、愛里咲は苦笑いを零す。


「する?」

そう言って愛里咲の顔を覗き込む琉のお決まりな悪魔の笑み。

でも、あの頃よりも、その笑みが優しい。


「しません!」

そう言って、今度は琉の前を歩き出す愛里咲。


「……俺以外の男に流されんなよ」


繋いだ手に力が篭り、愛里咲は驚いて琉を見上げた。


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