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第10章 俺の弟は…
「ウザイって言えばぁ、琉って愛里咲と結婚したんでしょ?この前愛里咲と会ったよー」

過去の自分の話から、芙美の話が突然に切り替わる。

戸惑う翔とは裏腹に、渚は慣れた感じで話を遮った。


「それの何がウザイの?私たちこれから愛里咲のお見舞いに行くから…また今度ね」

翔の腕を引き、芙美から離れようと足早に歩く渚。


「なら尚更、女手があった方がいいでしょ?」

「はぁ⁉︎ 」

競歩のように、芙美は渚の歩調に合わせてくる。


「いや、それは…琉にも聞いてみないと……」

おずおずと口を開いた翔だが、

「大丈夫!私、琉の同級生で元カノだけどぉ、琉とも円満に別れたから気にしないで」

「え…尚更ダメでしょ」

「ヘーキヘーキ!愛里咲とも友達だから」

芙美にVサインを返されてしまう。


「愛里咲と友達⁉︎ よくそんな事が言えるね!」

「ウザイって言ったよね……」

イライラからか口調の荒くなった渚の言葉に、翔の言葉を被せる。

だが、

「言ってないよぉ。てかぁ、愛里咲の子供見たよ。双子?琉にソックリ」

芙美の返しは、翔と渚の脳内に可愛い盛りの双子の映像を映し込んだ。


「うん、陽花ちゃんと陽向くんて言うんだよ」

「可愛かったでしょ」

「翔さん、伯父バカ…」

思わず眉の下がる翔と渚。


「あー…確かに琉にそっくりだから、連れて歩けば鼻が高いだろうね。愛里咲の親もでかした!って褒めてんじゃない?私も琉のDNAだけ欲しいな〜」


せっかく下がった怒りのボルテージも、芙美の言葉がまた引き金を引く。


「愛里咲はそんな目的で琉くんと結婚した訳でも、子供を産んだ訳でもないよ!」

「熱くなんないでよ〜。大丈夫!愛里咲の前では言わないから」

渚の怒りなんて気にも止めず、芙美はヘラヘラとVサインして見せる。


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