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第10章 俺の弟は…
目的の階を押せば、エレベーターは当たり前に上へと登って行く。

3人の他に乗り合わせた者はなく、黙り込む翔と渚を気にもせず、芙美は1人独壇場で喋り続けている。



「ヤバくない?」

「……ヤバイ……と思う」

小声で言い合い、チラチラと芙美を見る翔と渚。


「芙美のせいで私まで琉くんに嫌われるかも……」

顔を覆う渚に、

「お、俺は好きだから!」

焦った翔は大声を上げていた。


「バカップル〜!馬に蹴られて…何だっけ?」

ケラケラ笑う芙美に、顔を赤らめて見つめ合っていた翔と渚は我に返った。


「立場的に馬に蹴られるのは芙美の方でしょ」

渚が言い返すと、

♪〜

エレベーター到着音と共にメール音が鳴る。


「あ、琉からメールだ」

翔がポケットから携帯を取り出し、慌てて開いた。


「何か部屋の前にストーカーが張り付いてるらしくて、インターフォン切ってるんだって。着いたらドアノックしてって」

部屋へと続く廊下を歩きながら翔が言えば、

「あ! 芙由!」

芙美がドアの前に佇む制服姿の少女へと駆け寄った。


「ストーカーと知り合い⁉︎ 」

「妹がストーカーって……琉くんの⁉︎ 」

目を見開く翔と渚の前で、

「お姉ちゃん⁉︎ 」

「妹〜!みぃつっけたぁ!」

一石二鳥ってヤツ〜?とご機嫌に、芙美が両手で作ったVサインを頬に寄せて嬉しそうに笑っていた。


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