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第10章 俺の弟は…
チラッと芙美を見た後、琉の唇が愛里咲の耳元へと寄せられる。

「トドメは愛里咲が刺しとけよ」

「ええっ⁉︎ 」

意地悪く笑うと、

「兄貴手伝って」

今度は翔へと視線を移す琉。


俺?と首を傾げる翔に、”話があるんだろ” 小声で言う琉。

その言葉に、

「あ? ああ‼︎ 」

思い出したように叫び翔が立ち上がった。



「で、話って何?」

寝室に入り、陽向を抱き上げた琉が翔を振り返る。

食事が出来るまでの間に、琉と翔とで双子をお風呂に入れ、調子の悪い愛里咲の代わりにミルクを飲ませていた。

満足げな顔で眠る陽花を眉を下げて見つめていた翔は、

「あ?ああ!」

琉の言葉に我に返り、姿勢を正した。



「白取さん、本社の上層部に呼び出されたらしい」

「ふーん」

「セクハラの事も反省してないみたいだし、周りに口止めもしてたらしい」

「……………」

ここまでは電話でも軽く話していた。

翔が聞きたいのはこの先だ。


「後、さ……元上司に復讐を持ち掛けたとか、元部下に喧嘩を吹っかけたとか。元部下って、お前の事…だよな?」


ピク…と琉の眉が小さく動いた。


「……何で?」

ウトウトし掛ける陽向を見ながらそう聞く琉。

だが、その声のトーンに少しだけ動揺が感じられた。



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