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第10章 俺の弟は…
ごめん…と小さな声で謝りながら、ポロポロと頬を流れ落ちる愛里咲の涙を見て、芙美は勝ち誇ったように笑った。


「不幸で身を固めて、同情で琉の気を引いて…」

「芙美はおかしい」

静かな渚の声が芙美の言葉を遮る。


「琉くんは愛里咲に同情したんじゃない。陰で泣いて必死に笑顔作ってた愛里咲が不幸で身を固めてたなんておかしい」

「陰でって所がミソなんだって!渚だって琉の事ずっと好きだったじゃん?同情で琉を持ってかれて悔しくないの?」

「愛里咲はそんな子じゃない。それに、琉くんと愛里咲のおかげで翔さんと出会えたんだもん。全然悔しくなんかない」

冷静にそう返す渚を、すっかり口の止まった芙美は睨み付ける事でしか対抗出来ない。



「愛里咲…」

静かな口調のままの渚に声を掛けられ、愛里咲の肩がビクッと小さく震えた。


「私は、無理に話せとは言わない。でも、心配してるから……だから、吐き出せる所だけでも吐き出して」

フワッといつものように笑った渚に、

「う…ん、ありがと……」

泣き顔のまま、愛里咲も小さく微笑む。


「はぁー…渚は優しいのね〜」

「芙美が冷徹過ぎるだけ」

「うわ、失礼しちゃう」

すっかりいつもの口調に戻った芙美。

その肩を、

「お姉ちゃん、琉さんと付き合ってたの?」

ガッチリと掴んだ芙由が、ゆさゆさと揺さぶった。



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