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第10章 俺の弟は…
「翔さん、琉くん!」

寝室に遠慮がちな声が掛かる。

翔がドアを開ければ、真っ青な顔の愛里咲とその身体を支える渚の姿。

慌てた様子で琉が駆け寄り、愛里咲の身体を抱き寄せた。


「愛里咲を休ませたいから帰ろ?」

翔に声を掛ける渚に、

「サンキュ。あのウザイ姉妹も連れて帰ってくれる?」

愛里咲をベッドへと運んだ琉が振り返りながら聞く。


「ウザイけどね。連れてきた責任もあるし、愛里咲を休ませるために連れて帰るよ」

「兄貴より頼れる ”義姉ちゃん” じゃん」


笑い合う2人だが、芙美と芙由を帰らせるのは一筋縄ではいかなかった。

大苦労の末、

「皆帰ったよ」

そう言って琉が戻って来たのは、1時間近く経ってからだ。


「ありがと。結構掛かったね?」

「あー…兄貴たちはまだ掛かってる」


最後は翔が姉妹を引き摺るようにして玄関の外へと出し、琉が玄関の鍵を掛けてシャットアウトした。

きっと翔と渚は今も手を焼いているのだろうと、琉は小さく苦笑いした。


「トドメは愛里咲が刺せって言ったのに、何で愛里咲がトドメ刺されてんだよ……大丈夫か?」

一人の時間にいろいろと考え過ぎて、愛里咲の顔色は先程よりも悪い。

ベッド脇に腰掛けた琉は、そっと愛里咲の髪に触れた。


「……っ、大丈夫く、ない……」

ゆっくりと身体を起こし、琉に抱き着く愛里咲の身体は小刻みに震えていた。



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