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第10章 俺の弟は…
はー…

どちらともなく大きなため息を吐き出したのは、

「なんか、疲れたな…」

苦笑いの翔と、

「芙美もどうしようもないけど、輪を掛けて芙由ちゃんも大変でしたね…」

苦笑いすら返す元気のない渚。


玄関前で張り込むと言い張る芙由を翔が抱え、エントランスの外まで連れ出した。

忘れないようにと、何度もマンションの写メを撮る芙美は、全くもって妹を止める気配もなく…

姉妹をタクシーに詰め込み、強制的に帰宅させた。


精神的な疲れからか、どっぷりと疲れた翔と渚はほとんど会話をしないまま、いつの間にか渚の家の前へと辿り着いていた。


「渚も実家暮らし…なんだよな」

二階建てのオシャレな外観の家をジッと見つめる翔。


「はい。兄夫婦がいるから、居心地悪くて…」

苦笑いする渚の言葉に、

(お互いの家に行き来は難しいな…ホテルか?)

邪な考えに耽る翔。


「翔さん?」

「え?」

不意に覗き込まれた顔を上げれば、

「送ってくれてありがとう。おやすみなさい」

チュッ

頬に柔らかな唇が押し当てられる。


「っ」

思わず目の前の渚を、キツくキツく抱き締めていた。


「翔さっ…ん⁉︎ 」

驚く渚の唇に、無理矢理重ねた自身の唇。

言葉を紡ごうと開いた渚の口の中へ舌をねじ込む。



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