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第12章 俺の弟の胸の内
車から降りて数歩下がり、芽衣に向けて手を振る。

なかなか発進しない芽衣の車に首を傾げていれば、愛里咲の携帯がメールの着信を報せる。


『双子ちゃんが風邪引く!早く家に入りな。心配だからそれまで見てるから』

芽衣からのメールに、ペコリと頭を下げ、愛里咲は自宅マンションのエントランスへと歩き出した。


「今日のご飯は何にしようか?」

双子の離乳食も朝昼の2回に進み、夕飯の支度の時に作り置く事が増えた。

双子のベビーカーを押しながら、愛里咲の頭は冷蔵庫の中味を思い浮かべる。


エントランスへ入ると、オートロックの自動ドアを恨めしそうに眺める女性の姿に、愛里咲の頭は一気に現実へと引き戻された。


派手なブランドものに身を包んだ女性…

「─────…っ」

思わず歩みを止め、息を飲んだ愛里咲を振り返った女性…


「愛里咲!」

「ふ、みちゃん……」


振り返ったその女性…芙美は笑顔で愛里咲へと近付いてくる。


「あはは、そんな嫌そうな顔しないでよ。琉は?」

顔に出ていたのか!と愛里咲は慌てて笑顔を浮かべる。

「ごめんね、琉ちゃんはまだ仕事中で…」

そろそろ琉が帰宅する頃なのだが、どうか鉢合わせませんようにと、愛里咲の視線が泳ぐ。


「だよね。あのデカイ会社でしょ?すごいよねぇ」

「え⁉︎ 」

芙美が琉の会社に来たことがあるのか…

会社を知る程、最近の付き合いは深いのか…

(まさか芙美ちゃんとよりを戻す…なんて事は……ないか。じゃあなんで……?)

芙美に対する琉の態度を思い出せば不安にもならない。

だが、ならば何故と新たな不安が愛里咲の頭の中を駆け巡る。



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