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第12章 俺の弟の胸の内
ふっ…と芙美が小さな嘲笑を零す。

「なんで知ってるかって?芙由を琉の会社に連れて行ったのは愛里咲でしょ」

その言葉に、数か月前の出来事へと頭が遡る。


(あの時は、お財布を拾ってくれた親切な子くらいの認識だったから…)

軽率だった自分の行動に、愛里咲は唇を噛み締めた。


「芙由ってば、あんな大きな会社に勤める彼氏がいるってホラ吹きまくってぇ、琉のところに毎日女子高生の大群が押し寄せてるでしょ?」


「えっ⁉︎ 」

思わず大きく出てしまった声。

ベビーカーの中から愛里咲と芙美を交互に見ていた陽向の顔が泣き出しそうに歪む。

その様子に気付く余裕もない程、愛里咲の頭の中は混乱していた。


(そんな話、聞いた事ない……琉ちゃんが言わないだけ⁉︎ )


それは芙美か、或いは芙由の嘘なのか…

それとも琉が黙っているだけなのか…


(なんで?私には言えない?言いたくない?)

泣き出しそうに歪んでいく愛里咲の顔に、芙美はどこか嬉しそうに口端を上げて笑った。


「まぁさ〜、あのくらいの歳だと見た目に惚れるミーハーな気持ちだからさ、そのうち冷めるよ」

恐る恐る顔を上げて芙美を見れば、勝ち誇ったような顔で愛里咲を見ていて…

「私みたいに中身までどっぷり惚れてると全然冷めないけどね」

「……っ……」

宣戦布告とも取れる芙美の言葉に、愛里咲はベビーカーを掴む両手にギュッと力を込めた。


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