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第12章 俺の弟の胸の内

じわっと、愛里咲の瞳に涙が幕を張る。
伝わらない─────…
それがもどかしくて言葉を紡ぎたいのに、愛里咲を嘲笑う芙美が子供に手を伸ばすのが怖くて逃げ出したくなる。
「あー…言い方が気に入らなかった?ごめんごめん」
ヘラヘラ笑う芙美に、愛里咲は深呼吸を繰り返して必死に心を落ち着けた。
なのに、
「貸し借りじゃないよ。真面目に、こっちを私に頂戴って言ってるの」
そう言って陽花を指差す芙美の言葉に、愛里咲の心がまた黒々と渦を巻く。
「……本気で……言ってるの?」
「もちろん!」
何故か ”真剣アピール” をする芙美の、そのあり得ない発想に愛里咲は返す言葉が浮かばずただ絶句するしかない。
「悪い話じゃないでしょ?
芙由も可愛いって気に入ってたし、こんだけそっくりなら小さい琉がいるみたいで諦めもつくかなぁって。
愛里咲だって、2人見るより1人の方が楽でしょ?」
回らない頭と渇く口を必死に動かし、
「……そんな訳……」
ない…と言いかけた愛里咲の言葉を遮り、
「愛里咲は楽になって、芙由は琉のストーキングを辞める。一石二鳥じゃない?」
まるでものすごくいい事を思い付いたかのように、芙美は満面の笑みを愛里咲へと向けた。
その笑顔に、愛里咲の頭と心がスーッと冷めていく。
「……その考え方、全く意味がわからないよ。賛同するところが見当たらない」
ため息混じりに吐き出された愛里咲の言葉に、芙美は気を悪くする様子もなく笑顔を崩さない。
「えー?一先ずさぁ、うちに預けてくれない?あんま手が掛かんない方」
「嫌!」
「何でよ〜?ケチ〜!琉も子供も一人占め?愛里咲ってホント性格悪いよね!」
「何て言われても絶対に嫌だから!」
見苦しいと言われても、ここで負けるわけにも引き下がるわけにもいかない。
虚勢を張る愛里咲だが、
「じゃあ今夜だけでも!ね?」
陽花に手を伸ばされた芙美の手に、心臓が嫌な音を立てて速まる。
「やめて!」
「ちょっとだけだってば!」
「そういう問題じゃないでしょ!離してよ!」
(こんな時なのに…私が強くならなきゃなのに……っ)
睨むように見た芙美の顔も、
必死に抱き寄せる双子の顔も、
涙で滲んで歪んでいく。
伝わらない─────…
それがもどかしくて言葉を紡ぎたいのに、愛里咲を嘲笑う芙美が子供に手を伸ばすのが怖くて逃げ出したくなる。
「あー…言い方が気に入らなかった?ごめんごめん」
ヘラヘラ笑う芙美に、愛里咲は深呼吸を繰り返して必死に心を落ち着けた。
なのに、
「貸し借りじゃないよ。真面目に、こっちを私に頂戴って言ってるの」
そう言って陽花を指差す芙美の言葉に、愛里咲の心がまた黒々と渦を巻く。
「……本気で……言ってるの?」
「もちろん!」
何故か ”真剣アピール” をする芙美の、そのあり得ない発想に愛里咲は返す言葉が浮かばずただ絶句するしかない。
「悪い話じゃないでしょ?
芙由も可愛いって気に入ってたし、こんだけそっくりなら小さい琉がいるみたいで諦めもつくかなぁって。
愛里咲だって、2人見るより1人の方が楽でしょ?」
回らない頭と渇く口を必死に動かし、
「……そんな訳……」
ない…と言いかけた愛里咲の言葉を遮り、
「愛里咲は楽になって、芙由は琉のストーキングを辞める。一石二鳥じゃない?」
まるでものすごくいい事を思い付いたかのように、芙美は満面の笑みを愛里咲へと向けた。
その笑顔に、愛里咲の頭と心がスーッと冷めていく。
「……その考え方、全く意味がわからないよ。賛同するところが見当たらない」
ため息混じりに吐き出された愛里咲の言葉に、芙美は気を悪くする様子もなく笑顔を崩さない。
「えー?一先ずさぁ、うちに預けてくれない?あんま手が掛かんない方」
「嫌!」
「何でよ〜?ケチ〜!琉も子供も一人占め?愛里咲ってホント性格悪いよね!」
「何て言われても絶対に嫌だから!」
見苦しいと言われても、ここで負けるわけにも引き下がるわけにもいかない。
虚勢を張る愛里咲だが、
「じゃあ今夜だけでも!ね?」
陽花に手を伸ばされた芙美の手に、心臓が嫌な音を立てて速まる。
「やめて!」
「ちょっとだけだってば!」
「そういう問題じゃないでしょ!離してよ!」
(こんな時なのに…私が強くならなきゃなのに……っ)
睨むように見た芙美の顔も、
必死に抱き寄せる双子の顔も、
涙で滲んで歪んでいく。

