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第12章 俺の弟の胸の内
琉の腕の中へと、しっかりと抱き止められた愛里咲。

その姿に、芙美は唇を噛む。

だがすぐに、

「琉っ、おかえり‼︎ 」

琉の元へと駆け寄って、愛里咲の背に回されている腕を掴んだ。


「私も琉のこどもが欲しいなぁ!双子なんだからさ、1人くらい…」

「愛里咲、飯は?」

まるで芙美の言葉が聞こえていないかのように、話の途中で琉が歩き出す。


「あ、えっと…ごめん……まだ何もしてなくて……」

チラチラと芙美を振り返る愛里咲の肩を、優しく抱き寄せる琉の腕は、

たった今、芙美の手を強い力で振り払ったもので、

「あの…琉ちゃん……」

「いつもなら風呂の時間だろ。こんな遅くから飯作り始めんの?」

琉に肩を抱かれたまま、心配そうな視線を芙美へと向ける愛里咲。

その姿が、芙美にはまるで琉の隣を自慢されているように思えて、心中に憎悪が渦巻き始める。


「手伝うって言ったのに、愛里咲ってば家にも入れてくれなくて…っ」

「陽花と陽向も飯まだなんてな。そりゃ泣きたくもなるよなぁ、陽向」


芙美の言葉に被せるように、琉が話し出す。

その内容は ”夫婦” と ”親子” の会話で、

それはまるで、芙美に入る隙はないと言われているようだ。


「琉!私こう見えても歳の離れた妹を抱っこしてきた過去があるんだよ?だから、くれるんなら女の子がいい…っ」


芙美を完全無視して、自動ドアを通る四人を、芙美はめげずに追いかけた。


ガンッ

ドアを押さえた琉が、ようやく芙美を振り返る。

「琉……ありがと……」

ホッと息を吐き出し駆け寄る芙美。

だが、

「お前ら姉妹ってバカなの?二度と来んなって言ったよな?」

冷たい声が響く。



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