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第13章 俺の周りの企み
床へと寝かされた愛里咲は、瞳を閉じ、今だ呼吸を乱している。

下半身だけ晒された肌は、上に着たセーターの色が黒いせいか白さが際立つ。


それは堪らなく美しく映えるのに、

どうしようもなく汚したくなる。


「愛里咲……」

名前を呼ばれ、薄っすらと目を開いた愛里咲の瞳。

身体を開けば、素直に泣ける。

身体を開けば、ようやく素直に言葉を紡ぎ出す。


そっ…と、琉の手が愛里咲の頬に触れた。

涙に濡れた愛里咲の瞳が、恍惚として見つめてくる。


「 ”ごめん” て何だよ? ”頼り過ぎる” って?」

先程の愛里咲の言葉を聞き返せば、恍惚としていた瞳は苦しげに歪み、ゆらゆら揺れる涙で膜を張る。


「こんな風に泣かしたい訳じゃ、ないんだよ……」

悲しげに崩れた琉の表情を見て、愛里咲は慌てたように叫んだ。


「違うの!
後ろばっか見るのも…っ…頼り過ぎるのも、やめるの!」

「やめるんなら、無理矢理笑うのをやめろ」


その言葉に、

愛里咲の瞳からはまた涙が溢れ出す。


「だって……琉ちゃんが、1人で抱え込むから……」

「は?」

「私には……何も言ってくれないから……っ」

思いがけない言葉に、琉の目が見開く。


「……っ……俺は……いいんだよ」

「ダメ!」

上半身を起こした愛里咲が、琉の頭をそっと抱き寄せた。


「皆、最近の琉ちゃんはおかしいって心配してる。1人じゃ、抱え込めないでいるって……心配してる」

愛里咲の腕の中で、琉が息を飲んだのがわかる。

それは琉からの肯定であり、気付けなかった自分と、頼り切っていた自分を、愛里咲は更に責めることになる。


(ごめんっ……ごめんね、琉ちゃん)

ギュッ…と、愛里咲は更に強く琉の頭を掻き抱いた。


次の、瞬間───…

グルン…

景色が回る。


見上げた先には、

端正な琉の不機嫌な顔と、

(天井……?なんで?)

起こした筈の愛里咲の身体は、いつの間にかまた、琉の下へと組み敷かれていた。



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