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第4章 蛇蝎の槽

一方、天元寺剛に連れられて、安代聡一郎は羽生菱二の事務所ビルに向っていた。

「おい、一体誰にこんなこと頼まれたんだ」
娘を誘拐されたAOI電器社長、安代聡一郎は苛立っていた。

「悪いが、そのことは俺の兄弟分に会ってから、尋いてくれ。 俺は、頼まれただけなんでね」
聡一郎と並んで座っている天元寺は、高級車で両手を広げ、足を投げ出している。
下がったサングラスから覗く目には、悪びれた様子もない。

「くそっ、なあ、娘はアンタが誘拐したんだろ、何が目的なんだ、金か、仕事のことか？」

「それも、言えないなぁ、ただ、アンタも忙しいだろうけど、暫く会社休んでくれないかな」