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第4章 蛇蝎の槽

７
クラブ「ディスカス」の店内は、今夜エンジェル・マリーのショーということもあってVIP会員だけが集まっている。
マリーのショーは専らSM仕立てで、女を悦楽責めにすることが多い。　取り巻きの竿師達を使って責めさせたり、最後には観客が参加するときもあった。
集まった常連のVIP会員達の中には、マリーのショーのときだけ自ら仮装してくる客も少なくない。　SMチックな雰囲気を盛り上げるためだ。　なかには羽飾りのついた帽子にヴェネチアンマスクをつけ、マントを羽織っているものまでいる。　そんな客同士談笑している様子は、クラブの高級感もあって、まるでマスカレイド（仮面舞踏会）の様相だ。

フロアではクラブの女がオードブルや酒の入ったグラスを持って接客している。　いつもの穏やかなBGMだが、今日はマリー特製のムスクの香りが店内に振り撒かれていた。　女達が色とりどりのドレスで着飾り、ホール内を歩く様子は、まるでひらひらと泳ぐ観賞魚のようだった。