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第4章 蛇蝎の槽

「娘さんは、ちゃんとうちの若いもんが預かってますよ」
天元寺は社長室に入ってくるなり部屋を見渡すと、応接用のソファにどかりと座り、慇懃無礼に言った。

「一体、何故こんなことをする。 何が目的なんだ」
「ええ、何か社長をよく知る人間に頼まれましてね、どうも、社長に恨みがあるらしいですよ。ちょっと、自分と一緒に会ってもらえないですかね」
「会えば、娘は無事に解放するんだな」
「まあ、それはその人次第でしょうが、断ったら……、娘さん暫く帰れないかもしれませんよ」
天元寺は高く足を組み、安代聡一郎を見上げた。

「変なことしてみろ、お前の顔はもう防犯カメラに撮られているんだぞ」
「はあ、どうぞ、俺の顔なんか警察はすぐにわかりますよ、懲役二回、前科十一犯のヤクザなんでね」
「……」
「まあ、俺が捕まったら、娘は帰ってくるだろうけど……、ボロボロになってね」