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恋セヨ乙女
第3章 接近
吉野先生が生徒たちに注目されるのに時間はかからなかった。


私たちのクラスに加えて担当教科の生物を受け持つクラスの子たち。
もちろんその他にも先生に好意を寄せる生徒は数多くいるようだった。


かっこよくて優しい先生は「王子様みたい」だなんてみんなの憧れの的になっている。



「さすが女子校だね」


お昼休み。お弁当を食べ終えて窓から外を見ていたなっちゃんが呟いた。


「ん?何?」


「吉野先生」


その言葉に私とゆらも何気なく外を見ると女子に囲まれて明らかに戸惑う先生の姿があった。



女の情報網とはすごいもので、瞬く間に先生についての情報は駆け巡る。


出身大学、入っていたサークル、住んでいる場所、彼女のこと…


先生はすごい人気だったけど、それでもまだ彼女の存在が先生ファンたちのストッパーになっているようだった。


というのも先生の彼女はかなり美人なんだとか。
頭も性格もいいとか。



「もう芸能人の噂レベルなんじゃないの?」


「でもまぁこの辺の大学だから…全く根も葉もないわけじゃなさそうだけど」


私たちは興味本意で見ている、といった感じだろうか。
確かに先生はカッコいい。
始業式の日に目が合ってドキドキしたけど、そもそも先生とは必要以上の接点がある訳じゃない。


わざわざ他の子みたいに自分達から喋りに行くほどでもないけど普通に気になる存在。


教室の中と窓の外、机と教卓。
それが私と先生の距離。
テレビで見るイケメン俳優の噂を気にする心理に似たものだと思う。


「ねぇ、今日カラオケ行かない?」


ひとしきり先生を眺め飽きたのか、突然ゆらが提案した。


「お、いいねー。バイトまでには帰んなきゃだけど」


なっちゃんが乗った。


「あ、私サナちゃんに頼まれてることあるから行けたらにするね」


二年になった私は今年も学級委員になってしまった。
この学校は担任から指名された生徒が学級委員を務めるシステムになっている。


その基準は成績とか生活態度とかいろいろあるようだけど、サナちゃんに至っては使いやすいから私を指名してるだけなんじゃないだろうか。


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