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恋セヨ乙女
第14章 満月
ホテルの中庭に出ると風が吹いていた。
ベンチに座り見上げた空には黄色い満月。
黒い薄雲は風に煽られせわしなく流れていく。


月光が闇雲を透かし漆黒のキャンバスに妖しい美を描く。
柔らかな月明かりはまるで誰かのようで、さっきまで触れていた手のひらを見つめた。


浮気には興味がない。
鞠華に愛想を尽かした訳でもない。でも結果俺は鞠華を裏切った。
最後までしてないと言っても俺の中にあの瞬間、鞠華はいなかった。


…彼女を前にすると自分が自分じゃなくなる。
自分の中の一面がどうしても疼いてしまう。


十代の少女に…しかも教師が…


罪悪感と裏腹に彼女の柔らかさが蘇り胸が苦しい。


彼女の首筋に男の影を見た日、俺はあいつに嫉妬した。
思えばあの日から…いや、それ以前から俺の気持ちは始まっていたのかもしれない。


でも俺は教師で彼女は…


鈴村さんの気持ちには気づいていた。
だからといって応えられる身分でも立場でもない。
今夜超えてしまった一線は自分の至らなさでしかなかった。
彼女をアイツに渡したくないと思った。


…鞠華が言った彼女が俺のタイプというのは満更嘘じゃなかったのかもしれないな。


うちのマユと同じ名前の子がいるんだと、あの日教室で目が合った時からきっと彼女は俺の中に入り込んだ。


真っ直ぐな目と笑顔が印象的だった。


気がつけば目で追って、真面目さと要領の悪さに何度も手を貸したくなった。
いざ向かい合えば小学生みたいな意地悪をしたくなって……


「………」



そこまで考えて馬鹿馬鹿しいとふと思う。
俺は教師で彼女は生徒だ。
自分の至らなさ故その境界を越えてしまったが、本来なら越えてはいけない壁なのだ。


……そしてこんな事をしておきながら鞠華に対する罪悪感は驚くほど薄く、そんな自分がひどく軽薄に思えて仕方ない。


鞠華にではなく軽薄な自分が嫌なのかと、どこまでも自己中な自分が情けなくて乾いた笑いが零れた。





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