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恋セヨ乙女
第14章 満月
黄色い月はこんな俺を前にしても変わらず優しく微笑んでいる。


「月か…」


万物は月のようなものだと幼い頃、親父に教わったことをふいに思い出した。
あの頃は意味など分からずにいたが今ならなんとなく分かる。


物事は一つなのに角度によって見え方が違う。捉え方が違う。



……今夜の事を彼女はどう捉えただろうか。
そして俺は彼女からどう見えたのだろう……


俺から見えるものと彼女から見えるものが同じであればいいと思う。
でもそれは限りなく可能性の低い事。


教師と生徒でなかったならこれほどまで悩まずに済んだのだろうか。
あるいは彼女が高校生でなかったら・・・


問いかけても月は優しく輝くばかりで答えなんか教えてくれない。



その夜は結局朝日が昇るまでその場所にいた。



明け方戻った部屋は昨日の密事など嘘のように何もなく、それが自分と彼女の関係そのもののように思えた。
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