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恋セヨ乙女
第15章 動き出した関係
でも……


「大地」


「……」


「もう帰らなきゃ、送ってくれる?」


「はあ?」


にっこり笑ってお願いすると大地は眉をひそめる。



「……このタイミングで帰るとかお前ってSだな」


S?私が?


「そう?言われたことないけど」


「いや、Sだよ」


大地がパーカーを持って立ち上がった。


「そんなことないよ。大地はせいぜいエッチなサイトでも見ながら悶々してて?」


「このドSが!」


大地の叫びに笑ってみたけど心の中はちょっと複雑で。
……だって私、キスもそういうのも大地が初めてじゃない。


大地とキスしたときキスって人によって違うんだなって思った。
身体を触られる気持ち良さだって本当は知っている。


そんな私が大地の真っ直ぐな気持ちを貰っちゃっていいのかなって。


外に出ると夜は少し寒かった。


「…キンモクセイ」


秋特有の金木犀の溶けた空気が罪悪感を余計に煽る。


「トイレの匂いだな」


「…色気ないな」



先生との出来事はもちろん大地には話してない。
……黙っていてもいいんだろうか。
今更そんな疑問が渦巻いては私を締め付ける。


「……大地」


ツンと服の袖を引くと大地が振り向く。


「ん?」


「………」


「どうした?」


「な、なんか寒いね」


狡い私は都合の悪いことは話せない。
ごめんね、大地。ズルくてごめん。


「寒いとか風邪引くなよな」


着ていたパーカーを脱いで大地は私に着せる。
大地の匂いが胸に染みて思わず唇を噛み締めた。







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