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恋セヨ乙女
第15章 動き出した関係
「なんかすっごいいい話風だけど言ってることえげつないよ?」


「そう?要はどんな大地くんでも大地くんは大地くんだから受け止めるし愛しいよ、ってことを伝えればいいんじゃないかな?」


「ナルホド!」


さすがゆら。
そんな話でキャッキャと騒いでいると思いがけない人に声をかけられた。


「鈴村さん」


「………」


恐る恐る振り向いてみると間違いじゃなかった。



―――先生…


先生は穏やかな笑顔で色紙を手渡した。


「頼まれてた河内先生への寄せ書き」


「あ、ありがとうございます」


産休に入ったサナちゃんに赤ちゃんが生まれた。
だからクラスのみんなで寄せ書きを書いて渡しに行くことになった。
最後に先生にも一筆書いてもらい、…今、その色紙が私のところに戻ってきたというわけだ。


「で、大勢で押し掛けたら先生も体に障るから渡しに行くのは学級委員と風紀委員が代表で…ってことでどう?」


「分かりました」


「俺が連れてくから」


「先生も…ですか?」


「迷惑?」


「いえ…そんな」


先生は手際よく日時を決める。
次の土曜日、午後一時。待ち合わせは正門前…


私は正直微妙な気分で手元の色紙に目を落とした。
……ま、でも二人きりじゃないんだし。
忘れないうちに風紀委員のハルちゃんに予定を伝えて安堵のため息をひとつ。


……先生が先生であるうちは接触は仕方ない。
必要最低限のものであっても私は…本当は…まだドキドキしてしまう。


この気持ちが昔と同じものだとは思わない。
大地を好きだと今の私はハッキリ言えるから。
それなのに何故なんだろう…


色紙の先生の文字はすぐ分かる。
女子高生の字の中で一人異質な右肩上がり。


『おめでとうございます。先生の留守は預かりますから安心して…』


「安心してお子さんと向き合ってください……か」


いかにも「先生」な文に苦笑い。
…本当はあんなに意地悪なのにね。
普段の先生はその片鱗も見せない。
でも…もしかしたら修学旅行のあの夜みたいなことをしてるのは私にだけじゃなかったりするのかもしれないとふと思う。


私の知らないところで他の誰かとも同じこと、…ううん。それ以上だって…
ないとは言い切れないんだよね。


「………はっ!だとしてもそんなの私には関係ないし!」







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