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恋セヨ乙女
第20章 沙映子
だからといって大地を奪おうとかそういう頭は私にはなかった。……と思う。


でも上手いように世の中はできていて…
大学三年の夏、その機会は訪れた。


暑い日だった。
友好試合の後の飲み会でいつもよりハイテンションの大地はピッチも早い。


「おーい大地、大丈夫?」


「んー…」


珍しく酔った大地の足元は危うくて、大友と大地の家まで送ってあげることにした。


「今日の大地珍しいね」


「嬉しいんだろ、明日真優ちゃん来るらしいから」


「………」


大地を引きずり家の前まで行くと大友の携帯が鳴った。


「誰だよ…ったく、…もしもし」



だるそうに出た大友が途端にテンションを上げた。


……女か。
こいつもバカみたいな女が好きでほとほと困る。
どうして見抜けないんだか…
男なんてバカばっか。


大地は違うと思ってたのに…
こいつも馬鹿。
そんな大地を諦められない私はもっと馬鹿だけど。


「うん、これから?オッケーオッケー」


大友はハートを撒き散らして誰も見てないのにウインクをしてオッケーサインをしてみせる。


「じゃあ速攻で行くから!…じゃあ、」


「…女?」


「うっしゃー!リコちゃんゲット!」


「リコ?げーっ、あいつブリっ子じゃん趣味悪ー 」


「リコちゃんはブリっ子なんかじゃねーよ」


「そういう男がいるから馬鹿女がはびこるんだよな」


「…沙映子、悪口はほどほどにしないと顔歪むよ」


「はぁ?誰が悪口?私は本当の事言ってるだけ。悪いけど私とその辺の腹黒女一緒にしないでくれる?」


「…ま、いいけど。大地は素直な女が好きだぜ」


「!!!」


「ホラ大地、家着いたぞー」


「んー…」


…気づいてたのか、大友。


さっきの大友の言葉が深く胸に突き刺さる。
大地の鍵を取り出す大友に私は言った。


「いいよ大友、あとは私看るから。…リコんとこ早く行きな」


「………」


「鍵開けて放り込んでちゃんと閉めさせる」


「…じゃ、頼む」


大友は私に鍵を預け階段を早足で降りて行く。



「…大地、入りな」


鍵を開け壁に寄りかかる大地をトントンと叩き部屋に入れる。


「ベッド行きな」


「うん…」


「……しょうがないな、ホラ」


玄関で寝ようとする大地を支えベッドまで連れていく。


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