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恋セヨ乙女
第5章 再び
それから先生との個人的な接点はなく数週間を過ごした。
授業中やHRで見る先生は私の見てきた「吉野先生」であの日の面影は全くない。


夢だったのだろうか?
爽やかな先生を前に自分の記憶を疑って、ペンケースの中のボールペンを確認しては夢じゃないと確かめる。



気にしないと決めたはずなのにあの日の先生に今だに翻弄されている。


放課後、教室でエコキャップの集計を取りながら一人悶々としていると元気良くドアが開いた。


「真優ー」



サナちゃんがパンパンのレジ袋を二つ持って嬉しそうに入ってくる。



「ハイこれ!」


「…何ですかこの大量エコキャップは」


「身内とか友達とか、前集めといてってお願いしたのか予想以上に集まっちゃって」


「………」


「これでウチのクラスは今月の集計ダントツ一位だね!」


そして大量のエコキャップを押し付けて、「私これから検診だからよろしく」と肩を叩いた。


うちのクラスはサナちゃんの影響でこういうのに熱いから、クラスのだってまだまだあるというのに。


「…信じらんない」


途方に暮れながらも手を動かさないことには始まらないから地道に数を数えていく。


無理だ、理不尽だと思いながらも結局してしまう自分もどうかと思う。


この苛立ちは誰に対してでもなく自分への苛立ち。
苛々はいつの間にか集中力に変わり、私はこの作業にすっかり没頭していた。





それから一体どれくらいの時間が経ったのだろう。
気がつけば教室は薄暗くなっていた。


「―――――ん…っ!」


やっと終わった開放感から大きくのびをすると後ろのドアがガラリと開いた。



「鈴村さん」


「………」



吉野先生だ。
先生は教室に入ってきて机を見ると馬鹿にしたような目を向ける。



「これ一人でやってたの?」


「………」


「馬鹿だろ」














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