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恋セヨ乙女
第5章 再び
怖くて悔しくて涙が零れそうになった。


男の左手が私の胸元に伸びてくる。
膨らみを確かめるように撫で、揉み、シャツのボタンが胸まで外される。


そこから手が侵入し、下着の上から私の胸を掴んだ。
頂きを刺激するように摘み、余った手は乳房を揉みしだく。



「い、厭っ!」


今頼れるのは悲しいかな目の前の先生しかいない。
先生のスーツを握りしめ抱きつくと痴漢が慌てて手を離した。


怖い…助けて先生…


そのタイミングで電車がホームに到着し、扉が開く。


後方の気配が消える。
男は人混みに紛れ電車を降りたのだろうか。



「何?」


「………」


驚いた先生が振り向いた。
そして私の顔を見て…察知したのだろう。
私を抱き寄せギュッと抱き締める。


…怖かった。
今更ながらガタガタと体が震える。
その一方で先生の腕の中で安心している自分がいた。
ここなら安全だと、どうしてだろう…そんな風に思った。









「次は東雲町東雲町~」


車内アナウンスが流れ、ここで降りなきゃと頭の片隅で奮い立つ。


「先生…ありがとう。降ります」


背の高い先生に抱き締められると私の顔は胸の位置にくる。
心臓の音と包まれるような身長差が今の私に心地良かった。


……それから先生の温もりも匂いも。



電車がスピードを落としゆるやかに止まる。
一人になるのは怖いけど仕方ない。
お母さんを呼べば勘の良い人だから、私を見て心配するだろうしそんなことをされたと知られるのも嫌だった。


だから降りなきゃ。
自分の足で帰らなきゃ。


先生の胸板から顔を上げ、笑ってみた。


「一緒に帰ってくれてありがとうございます」



先生がいなかったらその先に及ばれていただろうし、一瞬でも癒されることはなかった。



すると先生はまた私を抱き締める。



「…今は降りない方がいい」


「………」


「まだ居るかもしれないだろ」


「………」


「とりあえず俺と降りて」




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