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恋セヨ乙女
第6章 彼女の存在


先生の言葉が優しくて、思わず先生を見上げる。


「…見るなよ」


「痛い…先生危ない」


先生が手のひらで私の顔を掴んだ。


「赤信号だから大丈夫」


「赤でもダメですよ」


掴まれた顔を撫でながら唇を尖らせると先生が笑う。
その笑顔は反則的に無邪気で。


……ヤバイ。
こんな先生にもときめいてる自分を無意識に牽制する。


先生は先生だし、あんな綺麗な彼女がいるんだから。


「もう少しでウエストモールだけど」


「あ、じゃあそこで」


「…ダメ」



やっぱり先生が優しい。
ズルいです、先生。
あまりいろんな顔を見せないでください。


教師としての優しさでも今の私には…


「…ウエストモールの次の信号を左に曲がった先の住宅街です」


「家の前まで送るから案内して」


「…はい」


「親に何か言われて困ったら、学級委員の仕事で遅くなったから送ってもらったって言いな」


「…はい」


「どうした?急に“はい”ばっかだけど」


クスッと笑って先生の大きな手が私の頭をポンポンと撫でた。


それはあまりにも不意打ちで、私は言葉を発することができない。



心臓が早鐘を打って胸の奥がギュッと苦しくて。




先生、
ホントにずるいです。困ります。


私はこんな経験したことないから…




こんなことだけで簡単に好きになっちゃいますよ…






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