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恋セヨ乙女
第28章 花の嵐
温泉旅行からの日々は瞬く間に過ぎた。


学校の秋はイベントも多い。
それに進級に向けての個人面談も始まる。


先生は自分の仕事が忙しく、残業禁止の学校故持ち帰りの仕事も多いようだった。
それでも私の部屋でご飯を食べていたし、年始めに決めた私との旅行のためにも年内に仕事は片付けたいとこぼしたこともあった。


私は生徒たちにも大分慣れ、楽しいと思えることも増えたように思う。
男子生徒の扱い方も春から比べれば随分分かってきた。


教えることの難しさ、それに伴う楽しさや喜びも確かに感じている。


年始めには約束だった旅行へ二人で行った。
初めての旅行は正に蜜月で、甘い時間を存分に過ごした。


私たちの学校は「学校」という組織の中でも効率的にできている方らしいけど、年度末の先生方はやはり疲れきっていた。


先生もその一人で私は先生の体調をどれだけ心配したか分からない。


二年目、私は一年生の担任を持つことになった。
この一年は本当に大変で何度も辞めたいと思った。


それでも時間と共に築けた信頼関係とか、生徒の笑顔とか。
明確な結果の出ないこの職業の真髄に触れられ実りの多い一年だったと思う。


この年の先生は去年の生徒を持ち上がり三年の担任をしていたから、先生にとっても忙しくも充実した一年だったのではないだろうか。


卒業式、生徒たちを見送る先生の表情を見ながらそんな風に思った。




その日の夕方、いつものように先生とマユの散歩に出た。
いつもの時間のいつものコースはほんのりと春の匂いがしていた。


とても暖かい日で今年は桜が咲くのが早いかもね…なんて話をしながらのんびりと川沿いを歩く。


「恭也さん、改めて卒業おめでとうございます」


ペコリと頭を下げると「俺が卒業したみたいだな」と先生が笑った。


「卒業式か…私はあれから6年経ったんだね」


私の卒業式…
忘れ物を取りに行ったら先生が教室に来て…


「サイテーって捨て台詞吐かれた日だ」


「もう…それは忘れてください。それにあんな言い方されたら誰だってそう思いますよ」


「今でも思ってる?」


「…いいえ」


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