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恋セヨ乙女
第28章 花の嵐
静かに首を横に振った。


だって今なら分かるから。


先生がどんな人か、どれだけ私を想ってくれてるか…


「私、あの頃の恭也さんと同じ年だね」


「そうか…」


「あの時は恭也さんがすごく大人に見えたから不思議な気分…」


「今は?」


「…感じないかも」


本当に不思議……


物思いに耽っていると先生が手を繋いだ。
いつの間にか先生との日常もこんな風に手を繋ぐことも「あたりまえ」になっていて…


春に吹かれマユと三人穏やかに歩く。




















「結婚しようか」



突然先生が言った一言はあまりにもラフで一瞬意味が分からなかった。


……だってプロポーズってもっとソワソワしたものだと思ってたから。



例えばお洒落なディナーに明らかに緊張したカレが突然かしこまっちゃったりして。
“来るぞ来るぞ”って私も決心を固めてくような非現実的なプロデュース。


それがプロポーズなのかなって。




それなのに今先生はすごくリラックスした顔で、まるで“散歩に行こうか”みたいなノリで…



「……はい」



悔しいなぁ…
こんなに軽く言われたのに答えはひとつだなんて。


今日が新しい門出の日で、こんなにいいお天気で。


いつもの風景の中に突然舞い降りたこの言葉は、人生の一大事なのにあまりにも気負いなく私に告げられ…


それを私はあたりまえの様に受け止めた。





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