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恋セヨ乙女
第2章 春の日の
教室に入ると見慣れた顔が揃っている。



「なんか…新鮮味ないね」


「確かに」



黒板には女子高生特有のミミズのような字で「名簿順!!」と書いてある。


その指示に従い私たちは席を探す。
…といっても私たち三人は名簿順で座ると席が近い。



「神崎ゆら」「篠田夏海」「鈴村真優」



ゆらと私が隣でなっちゃんがその前。
この二人と仲良くなったのも元はこの列びが縁だ。



大人っぽいゆらにサバサバしたなっちゃん、そして可もなく不可もない私は何故か気が合った。



私たちはそれからまったりと話ながら始業を待つ。
ちなみに担任も三年間の持ち上がり。
何も変わらない春…というのも確かに味気ないものだと改めて思った。



「ホラ着席!」



チャイムと同時にせわしなくドアが開く。
現れた担任はこれまた慣れ親しんだ「サナちゃん」こと河内早苗先生27歳。小柄で可愛らしい先生だ。



ダラダラと席につく生徒たちに「ダラダラしない!」とサナちゃんは一喝する。



「鏡しまう!化粧品しまう!」



その外見に反してサナちゃんはパキパキしている。
英語を担当するサナちゃんは可愛らしい外見とサバサバした姉御気質で生徒からの信頼も厚い。


「サナちゃん」なんて気安く先生を呼ぶのはいかがなものかと眉をひそめられそうだけど、この学校の空気は何となくそれを許している。


もっとも昔は格式張った「お嬢様学校」だったらしく、近年の校風を嘆く卒業生も多いと聞く。


それでも私はこの「なんとなく」な空気が好きで、
この学校の個性豊かな先生方が好きだ。


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