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恋セヨ乙女
第10章 大地
「ただいま…」


「おかえり。ちゃんと真優ちゃん送ってきた?」


「ああ、」


「家まで?」


「ちゃんと玄関先まで送ってきたよ」


「アンタが送り狼になったりしてないでしょうね!?」


「…なってねーよ!何なんだよほんっとにもう!!」


デリカシーのない母親を振り切って2階の自室に駆け込んだ。


そのままベッドにダイブする。
大きなため息をひとつ吐くと体の力が抜けていき、さっきの出来事が頭の中で蘇る。



「……やっべー」


真優に告ってしまった。


しかも首筋にキスマークまでつけてしまった…
勢いとはいえ真優はどう思っただろう。


十数分前の自分を思い返して一人悶える。


「真優…何て返事するんだろうな」


今日、真優が変だったのはあの男のキスマークが原因だろう。


真優は…あいつが好きなのだろうか。
女子高生が教師に憧れるなんて聞いたような話だけど、まさか真優が…とは。


真優が女子校にいるだけで安心していた俺はこの展開に正直焦った。


憧れも真優のフワフワした一方的なものならいざ知らず……


『友達、なんでしょ?』


あの棘を含んだ言い方は単に真優が可愛い生徒だからなのだろうか。


「…女連れときながらフザけんなよな」



物心ついた時から真優とは一緒にいた。


幼稚園、小学校、中学…


真優といるのは「当たり前」だったし自分の将来を考えた時、そこには必ず真優もいた。


でもそんな真優を女として意識し始めたのは、実は結構最近だった。


同じ高校を受験したのに真優が落ちた。


そこで初めて真優と離れて前ほど頻繁には会えなくなって……


初めはあの制服のせいだと思った。
でもそれは違うとすぐに気づいて。


俺の背が伸びて真優との身長差が広がるほど真優を見る角度が変わる。


去年の夏、屈んだ拍子に見えた胸の谷間に男として初めて真優を意識した。


俺がそうであるように真優も着実に女になっていた。


それでも変わらない笑顔、俺を呼ぶ声……


気づいたら俺は真優しか見ていなかった。


しっかりしてそうで実は抜けてるところも、本当は泣き虫なところも優しいところも…


真優の全部が好きで仕方なかった。







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