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恋セヨ乙女
第2章 春の日の
だってその人は……



「か、かっこいー!」


どこからともなく黄色い歓声が上がる。
私も彼から目が離せずにいた。



誰の目も引く容姿。
スーツ姿にはどこか色気が漂っている。



「静かに!えっと、話が前後しますがこの人は吉野先生。私の状況もあってうちのクラスの副担をしてもらうことになりました。私の産休後は引き続き担任代理として入ってもらう予定です」



「吉野恭也です。よろしくお願いします」


爽やかに少しはにかんだように、吉野先生は挨拶をした。
途端に歓声があがる。


「コラ!静かに!」


「サナちゃん!デキ婚してくれてありがとう!!」


「コラ!!!」



このクラスで良かったとみんなは言葉の通り狂喜乱舞。
そんな女子たちに吉野先生は困り顔で…
そんな顔がまた可愛いと大喜び。


「ハーイ!恭也くんに質問ー」


「芽衣!ちゃんと『先生』つけて!」


目をつり上げるサナちゃんの声はもはやみんなの耳には届かない。



「いくつですかー?」


「22です」


「新卒?」


「そう、…頼りないかな」



吉野先生の返答にまたクラスは「可愛い」の嵐。


「好みのタイプは?」


「えっ…」


「彼女いますかー」


矢次に質問するみんなの目は輝いている


「怖いな、女子校は」


先生はがしがしと頭を掻いて私たちを見る。


「…彼女はいます」



――――あ。いるんだ。



咄嗟にそんなことを思った自分に驚いた。
残念がる周りの声に隠れて恥ずかしくて思わず俯く。



「ホラホラ、もう始業式始まるから質問はまた後でね、」


早く講堂に行けとサナちゃんが急かして私たちはノロノロ立ち上がってドアに向かった。


「このクラスでラッキーだね」


「ゆら彼氏いるじゃん」


「目の保養は別だよ。ね、真優」


「アハハ」


笑いながら教室を出る途中、視線を感じてなんとなく振り向くと。




「………」



「!!」



その先には先生がいて目が合って、私は慌てて視線を戻す。



ドキドキ、ドキドキ、胸が鳴っていた。



その時の私は目が合った意味なんて考えようともしていなくて。
でもただ先生の綺麗な瞳に頬を赤く染められた。


偶然でしかない一瞬の出来事。
それが私と先生との


出会いだった。


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