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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第12章 泉~遠い昔の記憶
「ユウジから聞いたわ。すごく勉強ができる子だって」
少し意外だった。
荒木がそんな会話を母親と交わしているとは思っていなかったのだ。
「そんなことないです・・・・」
「あの・・・・、よろしく頼みますね」
「えっ?」
「あの子、あんな風に突っ張ってるけど、ほんとうは優しい子なんです・・・・」
「僕もそう思いますよ」
「ほんとに?」
「うん。だから、僕、荒木と一緒に熱帯魚を観るのが好きなんです。あいつ、魚のこと話すとき、ほんとにやさしいやつですから」
「樋口君・・・・・」
私は、そのとき母親と初めて視線をあわせた。
彼女の瞳は、少し潤んでいるように見えた。
「それに、僕、ここに来るのが楽しいんです」
「魚がいるからかしら」
「いえ・・・・、その・・・・、おばさんに会えるから」
いったい俺は何を言っているんだ。
その時、私は心の中でそう叫んだ。
どこか陰を感じさせるような母親の姿が、私にそう言わせたのかもしれない。
自分がそんな言葉を恥ずかしげもなく口にするような人間とは、思ってもいなかった。
だが、荒木の母親は、その場の妙な空気をうまくいなすように答えた。
それは、私を少し失望させるものでもあった。
「お世辞がうまいのね、樋口君は」
「い、いえ、お世辞じゃ・・・・・」
「こんなおばさんに会っても楽しくなんかないでしょう」
私には、何も言えなかった。
ただ、生まれて初めて感じる息苦しさにそのときの私は包まれていた。
「ユウジには苦労ばかりかけています・・・・」
母親は話題を変えるようにそう言った。
「事情があって主人が今はいないから、私があの子を、そしてこの家を守らなければいけない・・・・」
窓の外の梅雨空を見つめ、母親はそう言った。
それは私への、と言うよりも、彼女自身に言い聞かせるような口調だった。
そして、息苦しい沈黙が漂った。
荒木の母親との近い距離が、私の鼓動を高めていた。
「樋口君、暑い?」
汗を浮かべている私に、彼女がそう声をかけた。
そのときだった。
アパートのドアが激しくノックされたのは。
少し意外だった。
荒木がそんな会話を母親と交わしているとは思っていなかったのだ。
「そんなことないです・・・・」
「あの・・・・、よろしく頼みますね」
「えっ?」
「あの子、あんな風に突っ張ってるけど、ほんとうは優しい子なんです・・・・」
「僕もそう思いますよ」
「ほんとに?」
「うん。だから、僕、荒木と一緒に熱帯魚を観るのが好きなんです。あいつ、魚のこと話すとき、ほんとにやさしいやつですから」
「樋口君・・・・・」
私は、そのとき母親と初めて視線をあわせた。
彼女の瞳は、少し潤んでいるように見えた。
「それに、僕、ここに来るのが楽しいんです」
「魚がいるからかしら」
「いえ・・・・、その・・・・、おばさんに会えるから」
いったい俺は何を言っているんだ。
その時、私は心の中でそう叫んだ。
どこか陰を感じさせるような母親の姿が、私にそう言わせたのかもしれない。
自分がそんな言葉を恥ずかしげもなく口にするような人間とは、思ってもいなかった。
だが、荒木の母親は、その場の妙な空気をうまくいなすように答えた。
それは、私を少し失望させるものでもあった。
「お世辞がうまいのね、樋口君は」
「い、いえ、お世辞じゃ・・・・・」
「こんなおばさんに会っても楽しくなんかないでしょう」
私には、何も言えなかった。
ただ、生まれて初めて感じる息苦しさにそのときの私は包まれていた。
「ユウジには苦労ばかりかけています・・・・」
母親は話題を変えるようにそう言った。
「事情があって主人が今はいないから、私があの子を、そしてこの家を守らなければいけない・・・・」
窓の外の梅雨空を見つめ、母親はそう言った。
それは私への、と言うよりも、彼女自身に言い聞かせるような口調だった。
そして、息苦しい沈黙が漂った。
荒木の母親との近い距離が、私の鼓動を高めていた。
「樋口君、暑い?」
汗を浮かべている私に、彼女がそう声をかけた。
そのときだった。
アパートのドアが激しくノックされたのは。