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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第12章 泉~遠い昔の記憶
雨はまだ降り続いている。

傘をさし、私はぼんやりとアパート近くの商店街を歩いている。

中学生の頃のある記憶。

どういうわけか、それが濃密に私の脳裏に蘇っていた。

あの出来事からしばらくして、荒木は再び消えるように引越しした。

噂では、アパートの大家は執拗にその母子を探し続けたらしい。

それが家賃を回収するためか、或いは別の理由からなのか、当時の私にはわからなかった。

それ以来、荒木、そして美しい母親、荒木泉とは一度も会っていない。

社会人になった頃、一度故郷でクラス会があった。

「知ってるか、荒木。あいつペットショップやってるらしいぜ」

「ほんとかよ。あいつ熱帯魚好きだったからなあ」

旧友たちのこんな会話に、私が加わることはなかった。

47歳の今、いったいあいつはどこで何をしてるんだろうか。

気づいたとき、私は商店街の片隅にあるペットショップの前にたたずんでいた。

中を覗けば、熱帯魚が飼われた水槽が多く陳列されている。

何かに引き寄せられるように、私は店内に入った。

そして水槽の前で立ち止まり、カラフルな魚たちをじっと見つめた。

「きれいでしょう」

背後に店主らしい男性がいた。

まだ若そうな彼は、荒木とは似ても似つかぬ容貌の持ち主だった。

「ずっと泳ぎ続けてるんですね」

「ええ。でもね、魚はちゃんと水槽の外のことを敏感に観察してますよ」

「水槽の外の様子を、ですか?」

「私たちが何してるのかちゃんと観察して、記憶してるんです」

私は鼓動が高まるのを感じた。

あの日、熱帯魚の水槽の前で、絶頂にまで導かれた荒木の母親。

悦びに満ちた最後の嬌声が、私の体奥に刻み込まれている。

そして、その記憶は私に妻のことを想起させた。

「私、これから大家さんのところに行って、支払いを先延ばしにしてもらえないか、お願いしてきます」

1時間ほど前、妻はそう言い残して、アパートを去っていた。

気のせいか、いつもよりも濃密に化粧を施し、露出度の高い服装に熟れた肉体を包んで。

50代で独身の大家。

一人暮らしの彼の家で、妻は今、いったい何をして、何をされているのだろうか。

何を覚悟して、妻は彼の家を訪問したのだろうか。

わからない・・・・。

私にできることは、ただ目の前の熱帯魚を見つめることだけだった。

<第12章 完結>
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