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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第14章 瞳~図書館での出来事
この国に来て既に1か月。

その朝、瞳は僅かな緊張を感じていた。

在住日本人向けの図書館で、今日から働き始めるのだ。

「そろそろ行かなきゃ」

夫を見送った後、瞳は服を着替えた。

黒色のワンピース。

それは、切り刻まれた服の代わりとして、あの夜明け、彼がくれた服だった。

「何も考えないで」

淫らな記憶を振り切り、瞳は自宅を出た。

「柏葉さん、お待ちしてました」

在住10年という日本人女性が、簡単に業務内容を教えてくれた。

小さな施設だった。

図書室といったほうがいいのかもしれない。

瞳が受付に座ると、彼女は遠慮がちに言った。

「子供の学校に行かなきゃならないの。しばらくいいかしら」

「大丈夫ですよ」

「ごめんなさいね」

初日から瞳は一人きりになった。

だが不安はない。

受付が設置された部屋、そして奥にもう一部屋あるだけだ。

「これでもいろんな本があるのね」

視線を落とし、瞳は最新の蔵書リストを興味深く見た。

平日の昼間。

外の喧騒が嘘のような静寂だ。

カチカチと動き続ける壁時計の音が心地いい。

30分程経過した頃だろうか。

静けさを乱すように、男性の声が響いた。

「利用できますか」

いつしか、室内に訪問者がいた。

「あっ、はい」

慌てて顔をあげた瞳に、男性が1枚のメモを渡す。

「この本を探してるんです」

よく日に焼けた彼は、白の開襟シャツにたくましい体を包んでいた。

瞳はメモを見つめた。

えっ・・・・

そこにあるタイトルに、瞳は心を奪われた。

高鳴る鼓動を抑えることができない。

そんな・・・・

息詰まるような静寂と男性の視線が、人妻を追い込んでいく。

蘇る快楽の記憶。

中世の王妃・・・・

下を向き続ける瞳に、彼が言った。

「なかったらいいんですが」

「い、いえ・・・・、こちらにあるかもしれません」

立ちあがった瞳は、隣室に男性を案内した。

扉を固く閉じ、狭い距離に置かれた棚の間を進んでいく。

男性は、ただ黙って人妻のすぐ後をついていく。

外出した年配の女性が帰ってくる気配はない。

他の来館者も当分来ないようだ。

受付がある部屋には、もう誰もいない。

奥にある狭い書庫。

しんとした静寂。

密室の奥から、やがて、喘ぐような息遣いが僅かに漏れ始めた。

<第14章 完結>
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