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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第17章 千鶴~相撲部屋の美しき女将
「鉄平君、行っちゃやだよ」

明日東京に行くという夜、近所を流れる小川のほとりに鉄平はいた。

春の息吹が感じられる草むら。

隣には同い年の女子、若葉が座っている。

「俺、もう決めた」

「私が許さない」

「若葉に許してもらう必要ないだろう」

「いいなずけを見捨てるなんて、ひどい」

駄々をこねる若葉の手を、鉄平はそっと握った。

二人は近所で生まれ育った仲だった。

祖母の頃からの付き合いがある両家で生まれた同い年の二人。

いつしか二人は、大きくなったら夫婦になれ、と周囲から言われていた。

鉄平も、若葉のことが好きだった。

一緒に野山を駆け回り、川で泳いだ日々。

ショートカットがよく似合う、男勝りの女の子。

どこか弱さを持つ鉄平には、そんなタイプの女性がぴったりだった。

だが、別に深く付き合っているわけではない。

こうして手を繋ぐのだって、まだ数えられるほどだ。

「若葉は応援してくれないのか」

鉄平はさらさらと流れる小川を見つめて言った。

若葉は下を向いて黙っている。

「じいちゃんの夢を俺が果たす」

「・・・・」

「俺、相撲が好きで好きでしょうがないんだ」

きらきらと輝く星空が二人の頭上にある。

黙りこくっている若葉の肩を、鉄平はぎこちなく抱き寄せた。

そのときだった。

「よっ、ご両人!」

背後の土手から口笛とからかうような叫び声が響いた。

「剛田のやろう・・・・」

土手の上に、自転車に乗った数人の若者がいた。

中心にいる体格のいい人物が再び叫んだ。

「鉄平! 相撲取りになんかなれるわけねえだろ!」

昔からの腐れ縁を持つ、これもまた幼馴染の剛田。

幼少のころから取っ組み合いの喧嘩をしたものだ。

典型的ないじめっ子。

だが、鉄平が相撲で頭角を現し始めたころから、さすがに手は出さなくなってきた。

「絶対無理だ。鉄平、東京なんか行くんじゃねえ!」

立ち上がった鉄平は、しかし、言葉を返せず、黙って連中を見つめるだけだ。

「やめとけ、鉄平! お前なんか弱すぎる!」

剛田の目に、珍しく真剣な色が浮かんでいることに鉄平は気づかない。

反論しない鉄平に代わるように、若葉が立ち上がり、連中をにらみつけた。
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