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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第17章 千鶴~相撲部屋の美しき女将
千秋楽の館内には、既に満員御礼の垂れ幕が下がっている。

「鉄平のやつ、大きくなりやがって」

土俵にあがった幼馴染の姿に、剛田がつぶやいた。

「浦松、場所前の計測では身長185センチ、体重98キロ。北の峰さん、いかにもバネがありそうな体つきをしています」

「前相撲の頃は子供だった。3年間厳しい稽古に耐えたんでしょうな」

その言葉に、鉄平の母親がハンカチでそっと涙を拭った。

「陸奥の風も1敗とはいえ、元十両。負けられないでしょう」

土俵上でにらみあう両力士。

陸奥の風は、どっしりしたいわゆるあんこ型の力士だ。

「さあ、時間です」

「鉄平、いけ!」

剛田がもう一度叫んだ。

清五郎は目を閉じ、若葉は画面を祈るように見つめ続けている。

「はっけよい、のこった!」

両力士が激しくぶつかった。

その僅か数秒後、館内の大観衆が一斉にどよめいた。

土俵下に陸奥の風が呆然とひっくり返っている。

「浦松、見事な寄り切りです!」

アナウンサーが興奮したように叫んだ。

低い姿勢でぶつかった浦松が頭をつけて前みつをつかむと、力強くひきつけて一気に寄り切ったのだった。

「すごい」

解説者、北乃峰がうなった。

「北の峰さん、早かったですねえ、浦松は」

「陸奥の風の体が浮き上がってたんじゃないか?」

「磯野川親方の現役時代を彷彿させる速攻相撲。見事です、浦松」

まげを乱した浦松が土俵で一礼し、花道を歩いていく。

「いいぞ、いいぞ、鉄平!」

地元応援団は大騒ぎだ。

剛田の音頭で皆が手拍子をし、鉄平の名前を連呼する。

「やった!」

若葉もまた、歓喜してその騒ぎに加わった。

鉄平の両親が感激した様子で周囲に頭を下げている。

「じいちゃん、見てなかっただろう」

鉄平の兄が、冷静な口調で祖父、清五郎に訊いた。

「勝つとわかっとった」

「えっ?」

「土俵にあがったやつの目を見りゃわかる」

清五郎は厳しい表情を崩すことなく、そう言った。

「決定戦を勝って優勝だ!」

誰かがそう叫び、一段と皆が盛り上がったときだった。

「それはどうじゃろうな」

清五郎の鋭い声が部屋に響いた。

しんと静まり返った部屋に、アナウンサーの声が届く。

「柿本の巨体が吹っ飛びました!」

土俵下に裏返った柿本を、土俵の上から岩野竜が満足げに眺めている。
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