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10年目の恋
第3章 月夜の夢
二人で横になる3回目の夜。
ポチは静かに言葉を紡ぎ出した。

「お姉さん、俺でよかったら聞くけど?」

高校生が生意気言ってるんじゃない。
そんな言葉を笑いながら言おうとしたのに
布団の中で手を握られて言えなくなった。

「一人で泣くなよ」

その言葉は月の光に溶けて私の中にすんなり染み込んだ。

「今日、彼の同僚になんだか宣戦布告された」
「へ~」
「あたしの仕事を馬鹿にされたような気がする」
「うん」
「あたしは、あたしは・・・」

そこまで言って言葉に詰まった。
仕事のことで偏見を持たれるのは初めてじゃない。
「いつまでたっても自由業のような格好のあたしを
彼がよく思ってないことも知ってるの。
だから、彼の同僚には1度もあったことはないんだ。
こんな仕事のあたしを紹介できないんだと思う」

今まではっきりとさせないようにしてきた
あたしの中のコンプレックスを一気に吐き出した。

「お姉さんは自分の仕事が嫌いなの?」
「まさか!大好き。憧れだった仕事につけて嬉しいの。やりがいもある。
あたしね洋画が大好きで吹き替えや字幕なしで観たいって思いから
英語が好きになったの。それでJ大に入ったんだ。
お給料はすごく安いけど仕事で洋画が観れて本当に楽しいよ」
「うん」
「・・・・でも、彼がどう思ってるのか聞いたことはない」

「そんな彼氏の意見なんか関係ねーよ」
え?
「お姉さんが自分の仕事が好きで誇りを持ってる。
それが1番大事じゃね?
仕事が好きだって言ってんのに、その仕事をもし彼氏が否定したら
そんな奴こっちからフッてやれよ」

「お姉さんはさっき仕事の話をしたときめっちゃカッコよかった」
カッコイイ・・・
「そんなお姉さん、彼氏は知らないの?もったいねぇな」





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