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10年目の恋
第3章 月夜の夢
あと数日で徹が日本に帰ってくる。
なんだか気が重くてあたしは土日も外に出かける気にならなかった。

ポチをどこかに連れて行ってあげようとしたけど
「夏休みの中盤に英語の特別講習に出るから。その予習」と
勉強漬けだった。
あたしが仕事の時も、昼間はこうして勉強ばかりしていたんだろうか?

掃除でもしよう。
床に散らばったポチの洋服を集めていたら
ぽとりと何かが落ちた。

ん?

ポチの学生証・・・・・か・・・
─────え?
え?え?え?

宇野 徹?

徹と同姓同名?
すごい!

ポチすごい!
徹と同姓同名なんて運命感じちゃう!

「ちょっと!ポチ!宇野徹な・・・・・の?」
─────え?

「ん~?ああ。学生証?そうそう。宇野徹だよ」

20・・・03年度、ってなに?

「ポチ。なに?この学生証のねん・・・ど」
「え?俺、去年の持ってきちゃった?
家出するとき、身分証明があったほうがいいと思って急いで入れてきたからな。
って、今年のじゃん。も~お姉さんったら」

今年の?

落ち着け。
落ち着け。あたし。
意味がよくわからないぞ?

「ポチ。今年って何年だっけ?」
「ん?2003年?」
「平成は?」
「15年?」

大きく深呼吸する。

「ポチ。何年生まれの何歳?」
「1986年生まれの17歳。高校2年生」

─────10年前・・・・だ。
ポチの言う年は全ていまから10年前だ。

あたしも1986年生まれだけど・・・・
あたしは今年27歳だ。

17歳じゃ・・・・ない─────



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